続いている新しいタイプの糖尿病治療薬のお話ですが、もう少し聞きたいとのご要望で、以前の話題と重なりますが、再度お知らせしようと思います。

インクレチンは、小腸に食事内容物(消化物)が小腸に接して、栄養素が体内に運ばれる物理刺激から、小腸から分泌されます。要は、膵β細胞からのインスリン分泌を促す、ホルモンです。
ブドウ糖を血液に注射して血管内のブドウ糖の濃度を上げるより、同量のブドウ糖を飲んだ方がインスリンの分泌量が2倍以上になることは、以前から知られていました。
インクレチンは、小腸上部のK細胞から分泌されるガストリン阻害ポリペプチド(GIP)と、主に小腸下部にあるL細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とがあります。
ところが、これらのホルモンは血液の中や体内組織に存在しているジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)という酵素で、すぐに分解されてしまいます。そのため、くすりとして開発が進んでいませんでした。

この課題を解決する2つの方向性で、開発が進みました。1つは、DDP-4という分解酵素の活性を阻害する方向です。もう1つは、インクレチン分子構造を一部変えて、分解され難いインクレチン類似化合物質をつくる方向です。グルカゴン様ペプチド-1の類似物質ということで、GLP-1アナログと呼ばれています。
日本では現在、DPP-4阻害薬(経口剤)は4種類の開発が進んで、その1種類が今月から一般に使えるようになりました。GLP-1アナログ(注射剤)は3種類が開発されています。このタイプでは、週1回でOKというタイプもあります。

なんと、このインクレチンのすばらしいところは、膵β細胞からのインスリンの分泌を促進させる作用は、高血糖(血液中の糖濃度が高い)の時だけに作用します。そのため、糖尿病患者さんがもっとも恐れる「低血糖」が、起き難い効果があることです。
従来の糖尿病治療薬の考え方は、血液に直接インスリン刺激薬を入れる戦略、と食事の栄養素の吸収を遅らせる戦略、インスリンの感受性を細胞側の感度を高める戦略、がありました。いずれにしても、厳格な、食事量と血糖の管理を必要としていました。
ところが、このインクレチンはその厳格な管理から免れる(リスクが低くなった)、というものです。ですから、糖尿病の知識を十分に学んだ人医師や医療従事者によっての糖尿病の管理から、糖尿病を専門としない医師でも、比較的安心して使用できるものとして期待されています。
すでに、世界では多くの国で使われていて、その結果から、血糖降下作用は、おおむねDPP-4阻害薬はHgA1cを0.74、GLP-1アナログでは0.97くらいで、GLP-1アナログの方が血糖降下作用はやや強いという感じです。

インクレチンは他に、胃から食物排出を遅らせたり(胃がいっぱいになりやく、食欲に抑制が掛りやすい)、また一方で中枢神経に働き食欲を抑制したりする作用もあります。
さらに、従来ですと、膵β細胞をくすりで、半ば強制的に働かせてインスリン分泌を促していたわけですが、このインクレチンは膵β細胞の保護作用もあることも報告されています。非常に、生理的な点が評価されます。
このように、優れた治療薬によって、私たちは比較的に楽に、血糖を管理できる恩恵に恵まれました。これを、どのように使われるか、また未知の有効性なり、副作用なりに注目したいと思います。

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2009年12月21日





